「かまどさん」開発秘話 vol.1:二人は思った
「かまどさん」開発秘話
Newサイト「長谷園だより」のスタートを飾る話はやっぱり「かまどさん」
2000年に発表された「かまどさん」
ご飯を炊くなら「かまどさん」といわれるほど人気の長谷園を代表する土鍋ですが、その開発には実に10年の月日を要したのです。
これはなかなか長い話になりそうなので、3回の連載です。どうかみなさま、最後までお付き合い下さい。
3つの出会い
作り出したのは「長谷園七代目当主 長谷優磁」とそのときの工場長「佐藤和彦」の二人。
この二人はある種の天才と言っても良いかもしれません。この二人の天才の力が結実してつくられたのが「かまどさん」です。 七代目と佐藤工場長の出会いがなければ、そして長谷園という製陶所の環境がなかったら、その3つが揃わなかったら「かまどさん」は誕生しなかっただろうと、七代目がよく言っていました。「たまたま揃ったんや。」と七代目が言っていた、その3つの出会いは奇跡的なことで、興味深い物語ではありますが、奇跡の出会いの感動秘話は又次の機会に譲ることにして、今回は「かまどさん」がつくられるまでの10年の話をお伝えします。
どうすれば旨いもんが食えるか
七代目と佐藤工場長は二人揃って呑べいで食いしん坊、どうすれば旨いもんが食えるか?といつも考えているほど。 すぐそこに伊賀の最高質な陶土があるのですから、二人は旨いもん製造土鍋の開発に余念がありません。様々な調理機能を備えた土鍋の試作三昧の日々です。
そんな二人がここの所すっかり夢中になっていたのが、炊飯用の土鍋です。 昔から料亭などでは土鍋でご飯を炊いていて、その美味しさは衆目の一致する所、もちろん二人もそれを味わっていました。
特に七代目は生まれ育った伊賀が京都に近かったこともあり、先代の六代目に連れられて幼少のころから出入りしていた京都の料理屋で体験していました。料理人が土鍋を使って炊く銀シャリの旨さ!炊きあがりの米の艶、蓋を開けた時にたちのぼる香りが、その時の料理人の仕草振る舞いとともに記憶に焼き付けられたそうです。
土鍋で米を炊けば旨いのはわかってるが…
「土鍋で米を炊けば旨いのはようわかっとる。しかしな、土鍋で米を炊く時は、こまめに火加減せなならん。職人がつきっきりで、まあほかの料理を作りながらやけど、土鍋の様子見ながらチョコチョコと火をいじくっとるんや。」
「まあ飯が炊きあがって、土鍋の蓋を開けた時それは感動するな。あれは皆に見せたい、味わって欲しいと思う。しかし、家の主婦にあれを求めたらあかん。大変やからな。吹きこぼれたらおおごとやし、だいたいあんなにこまめに火の番はできへん。ごくたまに料理好きの女房が亭主にうまい飯を食べさせたろと振る舞うならええけど、毎日毎回の飯にそれを望んだらあかん。」と言いながら七代目はふっと思いました。
飯は旨くなければいけない、特に日本人にとって米は魂なのだ、大切にそだてられた米はうまい飯にして食べてあげなければなければならない。そのための毎回毎回の飯を大切に旨く食べるための土鍋があれば皆が喜ぶ。火加減なしで吹きこぼれなし、誰でも簡単にご飯が炊ける土鍋を作りたい。
お話は「かまどさん」開発秘話 vol.2:天才は天災 に続きます。
乞うご期待。
(文章:土鍋コーディネーター 竹村謙二)