「いぶしぎん」開発秘話 vol.1
食卓を囲むこと
長谷園を窮地から救った奇蹟の土鍋「かまどさん」に続いて開発された、驚くべき土鍋があります。それはなんと、簡単に自家製の燻製が作れる土鍋。
部屋の中で、しかも卓上で、煙を閉じこめてスモークできる土鍋「いぶしぎん」です。
*「かまどさん」の誕生秘話は「かまどさん」開発秘話をご覧ください。( 過去の土鍋物語はこちら )
「いぶしぎん」は長谷園機能土鍋の一つで、煙をなかに閉じ込めるという特殊な機能を備えた土鍋です。燻製料理を実際に作ってみると、なるほどとなんとなく納得できるのですが、でもこの土鍋よくよく考えてみると、なんだかすごーくヘンテコリンで、ものすごーく面白くて楽しい土鍋なんです。そんな「いぶしぎん」誕生までのお話です。
長谷園では時々に様々な仲間で集ってワイワイ食卓を囲むことが、いにしえから今日まで続く習わしです。暮らしのなかで培われていく人との関わりが、伊賀と長谷園の伝統を育んでいます。そして、そんな人とのつながりのなかから生まれ出てきた、面白い土鍋がいろいろあります。
焼き物が美味しい「ふっくらさん」や、蒸し物が得意な「ヘルシー蒸し鍋」、かつては鮎の頭を下にして立てて焼く「鮎土鍋」という風変わりなものもありました。
生み出された土鍋にはそれぞれに、関わりを持った人達とのいろいろな思い出やそのときの想いが織り込まれたストーリーがあるのです。
燻製土鍋「いぶしぎん」もまさにその一つ。
ご飯炊き土鍋「かまどさん」を発表してから、長谷園八代目のひたむきな努力が少しずつ実を結んで、販売がようやく少し軌道に乗ってきた頃・・・
七代目当主は次の新商品開発にむけていろいろ考えをめぐらし、知恵を絞っていました。
そんなある日、燻製のオーソリティーと言われる人が、長谷園にやって来たのです。
オーソリティー指導のもと、皆が集まった屋敷の庭で、一斗缶を使った燻製作りを存分に楽しむことになりました。美味しいイベントと訪問者に大喜び。まさしく一族の伝統・皆で集ってワイワイです。
大騒ぎで美味しくて大満足!みんな幸せ!・・・そこまでは、幸福なひとときを皆で過ごせてめでたしめでたしだったのですが、途中から一人 長谷園七代目 長谷優磁はなんだかムッツリと少し深刻な堅い表情です。
それはけっして不機嫌だったわけではありません。
“食卓は遊びの広場だ“と言うスローガンを掲げる七代目は
「この美味しさと楽しさを部屋の中で、それも卓上で味わいたい。」
と強く思い、頭がそのことでいっぱいになってしまったからでした。
さすが!旨いもの追求への情熱が素晴らしい!土鍋を囲めば世界は平和になると信じて疑わない七代目だ!と感心ばかりしてもいられません。そうなると大変なことになってしまいます。長谷一族をはじめ、周りのいろいろな人々をまきこんだ、七代目の燻製土鍋一大開発騒動が勃発するのです。
つづく
(文・土鍋コーディネーター 竹村謙二)
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